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3月にarXivに投稿された論文で気になったものをまとめた。

1、2月は年明けということもあり、グッとくる論文は少なかったけど、3月になってだんだん増えてきた。
徐々に更新していきます。

2103.01230 

Moving mirrors, Page curves and bulk entropies in AdS2
by Ignacio A. Reyes

概略:
2011.12005でmoving mirrorと呼ばれるセットアップでPage curveが出ることが指摘された。2011.12005では、matterはスカラー場で、(B)CFTとなる場合を主に考えている(Appendixでフェルミオンの場合も扱ってる)。この論文では、フェルミオンを考え、さらにmoving mirror上でconformalとならないような境界条件を課したのが新しいらしい。
 

2103.01920 

Towards traversable wormholes from force-free plasmas
by Nabil Iqbal, Simon F. Ross

概略:
ざっと見た感じ。Maldacenaたちがtraversable wormholeをフェルミオンを使って作っていたのを、force-free electrodynamicsというものを用いてやり直した論文。動機としては、wormholeをより大きくしたいということらしいが、あまりうまくはいかなかったみたい(?)。
 

2103.03132 

Conformal Bootstrap near the edge
by Antonio Antunes

概略:
wedge CFT(=BCFTのboundaryを曲げて、角度を導入した模型)で、conformal bootstrapを将来行うことを目的として、一点関数や二点関数のblock展開をしているみたい。DCFTと比べても対称性があまり高くなさそうなので、あまり有用な模型に思えなかった。
 

2103.03187 

Towards A String Dual of SYK
by Akash Goel, Herman Verlinde

概略:
SYKをstringに埋め込もうとした論文。自分の知識が足りなくて、まったく読めなかった。FZZT braneとかZZ braneなどを知らなかったから、一切手が出なかった。
 

2103.05303 

Entanglement Entropy in Interacting Field Theories
by Satoshi Iso, Takato Mori, Katsuta Sakai

概略:
場の理論でエンタングルメント・エントロピーを計算するのは自由場の場合でも難しいので、摂動論が使える場合であっても相互作用がある場合はほとんど研究されてなかった。この論文ではスカラー場でphi^4相互作用が入った場合にエンタングルメント・エントロピーに寄与する項を分類している。やはり計算が難しいらしく、相互作用による補正はコレ!っと、具体的な値を与えることはできていないみたいだった。
 

2103.06311 

Anomalies from correlation functions in defect conformal field theory
by Christopher P. Herzog, Itamar Shamir

概略:
自分の論文が引用されていてもおかしくないっていう期待のもと見たら、まったく引用されてなくて悲しい思いした。
偶数次元のCFTの場合、stress tensorのtrace anomalyにはEular数に比例する項があり、比例係数はmarginal deformationのパラメーターに依らない(Wess-Zumino consistency)。BCFTやDCFTの場合、boundaryやdefectの次元が偶数の場合も同様にstress tensorのtrace anomalyにはEular数に比例する項がある。この比例係数はbulkのmarginal deformationのパラメーターに依存する。それを詳しく解析したっぽい。
 

2103.06893 

Spectrum of End of the World Branes in Holographic BCFTs
by Masamichi Miyaji, Tadashi Takayanagi, Tomonori Ugajin

概略:
BCFTでboundary stateの内積を計算し、その振る舞いを調べたもの。Island関連の論文で、JT gravityの場合、dualのCFTはアンサンブルと言われてるので、それを念頭に置いているみたい。
 

2103.07477 

An Information Paradox and Its Resolution in de Sitter Holography
by Hao Geng, Yasunori Nomura, Hao-Yu Sun

概略:
DS/dS対応という、dS時空上の重力理論がそれより低い次元のdS時空上の場の理論で記述できるというdS/CFT対応でIsland公式について調べたもの。正直、何が問題で、どうやって解決したのかよく分からなかった。
 

2103.08909 

Capacity of entanglement in random pure state
by Kazumi Okuyama

概略:
random pure stateと呼ばれる状態のcapacity of entanglementを計算している論文。レプリカ法で、island公式のような計算をすると、全部connectedなもの、一部connected、disconnectedのように様々な寄与があり得る。この論文の面白い結果として、 capacity of entanglementには全部connectedやdisconnectedなものはあまり寄与しないことを得ている。
 

2103.09930 

d > 2 Stress-Tensor OPE near a Line
by Kuo-Wei Huang

概略:
2次元の場合にVirasoro代数が出るので、高次元でも出ないか調べたもの。先行研究でnull上のStress tentorを使うとVirasoro-likeな構造が出ることは分かってたけど、中心部分が発散してて微妙だった。この論文ではそれを解決するため(?)、少し違う極限を操作を行ったらしい。
 

2103.12667 

A 4D duality web
by Jeff Murugan, Horatiu Nastase

概略:
3d bosonizationやparticle/vortex dualityという名前でも知られる3d duality webというものを4次元でもできたという論文。
 

2103.13639 

Missing final state puzzle in the monopole-fermion scattering
by Ryuichiro Kitano, Ryutaro Matsudo

概略:
あっ。。。
 

2103.13186 

Bulk reconstruction of metrics inside black holes by complexity
by Koji Hashimoto, Ryota Watanabe

概略:
CV公式を用いて、ブラックホールの内側の計量を構成できることを言っている。仮定として、ブラックホールの外側の計量が、CFTの情報だけで他の方法により構成できているとしている。計量が一つの関数にしか依存しない場合、CV公式のみでそれが行え、計量が二つの関数に依存しない場合、CV公式とHartman Maldacenaのエンタングルメント・エントロピーを用いて、それが行えることを示していた。
 

2103.14046 

Negative energy enhancement in layered holographic conformal field theories
by Alex May, Petar Simidzija, Mark Van Raamsdonk

概略:
interval上の二つのCFTをくっつけてinterface CFTを作ったとして、そのうちの一つのCFTに注目すると、くっつける前よりエネルギーが下がることをホログラフィーを使って示した論文。
 

2103.14746 

Islands with Gravitating Baths
by Louise Anderson, Onkar Parrikar, Ronak M Soni

概略:
Island関連論文で、熱浴に重力がある場合について考察している。IntroductionとConclusionをざっと眺めただけ。Page timeでreplica wormholeのトポロジー変化を気にしている?
 

2103.15847 

Mutual information superadditivity and unitarity bounds
by Horacio Casini, Eduardo Testé, Gonzalo Torroba

概略:
著者たちの以前の研究で、null surfaceやnull cone上のEEの性質を調べて、c,F,a-theoremを証明したというのがあった。この論文では、null cone上のmutual informationについて調べ、unitarity boundが得られるということを示した。
 

2103.15852 

Islands and complexity of eternal black hole and radiation subsystems for a doubly holographic model
by Aranya Bhattacharya, Arpan Bhattacharyya, Pratik Nandy, Ayan K. Patra

概略:
原理的にはできるけど、あんまり面白い結果が出ないから誰もやらないんだろうなと思ってたら、ついに出た。Complexityを考えたからと言って、eternal black holeの場合なので、エンタングルメント・エントロピーよりいい結果が出ているようには見えなかった。
 

2103.16754 

Wormholes without averaging
by Phil Saad, Stephen H. Shenker, Douglas Stanford, Shunyu Yao

概略:
Island関連論文。AdS/CFT対応で、同じCFTを持ってきてその二つのdualの重力理論を考えると、dualな重力理論にwormholeがある場合、分配関数が分解できないので、CFT側の分配関数と矛盾しているように見える。それを解決するために、分配関数の積の平均を考えればいいという主張がなされていた。SYK模型では、ランダムな結合が入っているので、そういう状況に自然になっていて、この論文もそういう方向性の論文な気がする。
 

2103.17253 

Dirichlet Baths and the Not-so-Fine-Grained Page Curve
by Kausik Ghosh, Chethan Krishnan

概略:
著者たち自身の先行研究の引き続きもの(?)。ざっと読んだ感じだと、境界条件を変えても、island に相当する RT surface が存在すると主張しているだけにしか見えなかった。