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まず初めに

合格した大学院の指導教官に何を勉強したらいいか聞いてみましょう。
 
特に指示がなかったらこのまとめを参考にしてみてください。基本的に、AdS/CFTや共形場理論に興味ある人向けになっています。
 
賛否両論はあると思いますが、個人的には最低限の勉強をしたら早く研究のための勉強をした方がよいと思います。M1の間はずっと勉強をしろ、という方針の教員・研究室もありますが、そうすると、M2の5月締め切りの学振DC1での書類を書くのがしんどくなります(他にも理由はありますが)。
hep分野であれば、最低限しておく勉強は、場の量子論・一般相対性理論・群論ぐらいではないでしょうか。hep-th分野だと、さらに共形場理論・超対称性・微分幾何やトポロジーなどの数学が最低限な内容の気がします。AdS/CFTに興味のある学生であれば、場の量子論と一般相対性理論を勉強したなら、すぐにAmmon & Erdmengerの本を読み始めるといいと思います。

 

David Tong氏の書いたレクチャーノートはとても分かりやすいものが多いので、一度見てみることをお勧めします。

 

場の量子論

場の量子論は素粒子論のすべての分野で使うので、必ず勉強しておきましょう。標準的な教科書は
 


です。京大の4回生向けのゼミでは上記のどちらかが使われることが多いです。他にも

 

 

なども初学者向きでよいという話を聞きました。Schwartzは東大の修士の学生がゼミで読んでいました。Colemanは過去の講義を書き起こしたものであり、構成がPeskin & Schroederに似ています。坂本は、チラ見した感じだと、かなり丁寧に書かれていて、初学者向けだと思いました。有名ではあるけれど、決して初学者向きでない本として、

 

 

があります。よく勧められる本ではありますが、私は決して勧めません。どちらの本も一度場の量子論を勉強したことのある人向けの本です。特に、ゲージ場の量子論には赤外発散の処理の方法が一切書かれていないので、致命的だと思います。


一般相対性理論

hep-th, hep-ph分野の人は一般相対性理論は必須だと思います。特殊相対性理論の教科書におまけ程度についている内容や極端に難しい本(例えば、Hawking & Ellisなど)でない限り、一般相対性理論の本はどんな本でもよい気がします。参考程度に私が読んだ本を挙げると、

 


です。ディラックは極めて薄い本で、原著の方では図は一切ありません。日本語訳版では、訳者によって図が加えられ、理解しやすいようになっています。一般相対論の概要をつかむにはいい本です。ランダウ & リフシッツは力学と同じように作用原理から出発しているので、ある教授が大絶賛していたという話を聞いたことがあります。古い本なので古い記述もあります。また、誤訳もあるので注意が必要です。Waldは有名な本で読みましたが、初学者には難しいと思います。特に後半部分は、Hawking & Ellisを見よ、という記述が目立ちます。白水は、サイエンス社の黄色い本でスッキリとまとまっていて読みやすかったです。誤植が多いので、事前に訂正をみておきましょう。

初学者向きの有名な本を他にも挙げておきます。

 


    研究では、

     

 

を参考にすることが多いです。


超対称性

超対称性の教科書で有名な本は

 


です。ほぼすべての論文がこの本と同じnotationを採用しています。日本語訳もありますが、訳者による序文が素晴らしいだけなので、訳す際に誤植が増えている可能性もある・そもそも日本語に訳す個所が少ないなどの理由で、英語版を読むほうがよいと思います。他にも


などが読みやすかったです。(今では現象論的な動機はほぼないと思いますが。)
2000年ぐらいまでの話題であれば、


に載っている参考文献が参考になります。(この本のnotationは章ごとに異なっているため、この本で超対称性を初めて勉強するのはあまり勧めません。)


共形場理論

共形場理論は、2次元の場合と高次元の場合で大きく異なります。2次元共形場理論に関しては、様々な教科書やレビューがあります。例えば、日本語であれば、


があります。最近出版された、疋田さんの本は読んだことがないので、読みやすさとかは知りません。疋田さんの本は、2次元共形場理論以外にも、ホログラフィーや高階スピンゲージ理論など最近の話題が入っており、面白かったです。初学者にとって読みやすいかと聞かれると、個人的には伊藤さんの本の方が読みやすかった気がします。ホログラフィーの導入部分に関しては、日本語で書かれてる文章の中で一番すっきりと書かれていると思いました。伊藤さんの本は、個人的には読みやすかったですが、共形場理論を勉強したことのない後輩に勧めたところ、「共形場理論を知らないとキツイ」と言われてしまいました。江口さん & 菅原さんの本は、難易度が高いので超対称共形場理論に興味がある人でない限り、すぐに読む必要はないのではないでしょうか。
英語であれば、

  • Francesco, Mathieu & Senechal, "Conformal Field Theory,"
  • Ginsparg, "Applied Conformal Field Theory," [arXiv: hep-th/9108028]

 

が有名です。

高次元共形場理論は、近年注目が集まり始めたので教科書は少ないですが、いいレビュー・講義ノートがあります。

 

 

この中では、中山さんの本が一番、基礎的な部分から書かれていたと思います。(本を貰ったので、しっかりと宣伝!)


弦理論

弦理論で有名な本は、

 


の4冊です。Zwiebachの本以外どれも難しいですが、Polchinskiが一番読まれているのではないでしょうか。日本語訳(上巻下巻)もあります。GSWはもう古い本の部類に入ると思いますが、SUSYの導入の仕方がPolchinskiと違うので、それを参照したい場合に読むといいらしいです。BBSは上の2冊と比べて、新しい話題が取り入れられています。その代わり、行間が広い・結果しか書いてないことが多いです。Zwiebachは学部生でも読めるように、丁寧に(難しいところを避けて)書いてあるので、読みやすくおすすめです。日本語訳もありますが、訳がひどいので原著で読むことを強く薦めます。
他にも

 

 

というレビューがあり、内容としてはBosonic stringだけですが、Polchinskiに比べてはるかに読みやすいので、Polchinskiで挫折した人は読んでみるといいと思います。

 

日本語で書かれた本では、 



があります。細道さんの本の基となった講義録を用いて、東大の修士課程でゼミをやったことがあり、なかなか好評だったようです。個人的には、200ページと薄く、かなり駆け足な本のように感じたので、これ一冊で理解するには足りないように思いました。特に共形場理論に関してはなにか別の本を読む必要があると思います。

今村さんの本は現在紙媒体での入手が不可能で、サイエンス社の電子ブックでしか手に入らないと思います。この本も180ページ程度でかなり薄いです。昔に読んだため、読みやすかった・規格化のためのnotationが少し変だった気がする、という感想以外忘れてしまいました。 

太田さんの本は、構成がPolchinskiの本に似ています。Polchinskiとの大きな違いはブレーン解の作り方が詳しいところだった気がします。


数学

数学に関しては、群論と微分幾何を抑えておけばいいと思います。それ以外は必要になれば勉強すればよいと思います。群論に関しては、最低限のことは場の量子論の教科書にまとまっています。それ以上に必要であれば、


 

などが読みやすいと思います。微分幾何やトポロジーに関しては、

 

 

に書かれている内容を理解しているとよいと思います(必ずしもこの本で理解する必要はないと思います)。


最近の話題が書かれた本など

どんな研究が最近行われているかを知るには指導教官などに聞くのがよいと思います。他にも

 

 

などがここ10年以内の弦理論分野の進展が一般向けに書かれています。 

 

英語

僕が大学院生の頃は日本で開催される研究会はだいたい日本語で行われてました。しかし、最近は日本物理学会を除いて日本語で行われる研究会はほとんどありません。そのため英語の勉強をしておきましょう。 


最後に

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