アカデミアを辞めるに至った経緯などなど
はじめに
物理辞めま~す!
いぇ~い!!
最近、物理学会誌で博士課程の学生やポスドクのアカデミア転職の記事が出ていた。
ページ数の都合もあるだろうが、なぜアカデミアに残ろうと思わなかったのか、特にポスドクになっている場合、なぜ民間への転職を決意したのか、という点に関してあまり記述がなかったので、物理を辞めるに至った経緯や自分自身の考えをここにまとめておこうと思う。
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背景
素粒子論業界のポスドク状況・アカデミア状況をざっとまとめておくとこんな感じです。
詳しくはこちらの記事を参照。
- 毎年、10~20人程度ポスドクになる人がいる。
- 任期なしのポストを得ていない人は、約150人ほどいる。
内訳として、ポスドク120人くらい、任期あり教員30人くらいです。
(協力研究員という実質無職の人や非常勤講師で生計を立ててる人もポスドクとして数えています。海外のテニュアトラックポジションの人は含まれていません。逆に日本のテニュアトラックポジションは任期あり教員に含めています。) - ポスドク2期(ポスドク1期 = 3年)以内で、任期ありでもポストを取れる人は極めて少ないので、そのような若手を除いて考えたとして、ポスドク60人、任期あり教員30人程度が同世代や自分より上の世代にいるという状況である。
- ポスドク3期目の人が採用される可能性がありそうなのは、准教授・講師・助教の公募である。しかし、素粒子論に限ると、任期なし准教授の公募数は年3件くらい。助教だと年1件くらい。
分野指定しない公募を考慮すると、大体2~3倍の素粒子の人が採用されうる公募が出てると思う。つまり、海外でポストを取る、分野転向する、民間就職でアカデミアを離れる人がいない限り、ポスドクや任期ありの人はどんどん増えていく状況にある。
素粒子論の公募数の状況については、こちらの記事を参照! - 実際、ポスドクを3期目や4期目までに民間に就職する人は10%にも満たない。分野転向した人を含めても20%にも満たない。
このような状況なので、
- ポスドク3年目
自分のアイディアに基づく論文を書けていない - ポスドク6年目
論文本数 1本/年(PD期間の平均) を超えられていない(特に自分のアイディアに基づく論文で)
単著論文や自分以下の世代の人との共著論文を書けていない
特任助教以上の面接に呼ばれることがない - ポスドク9年目
特任助教以上の職に就けない(ただし、競争的獲得資金による肩書だけの特任助教ポストは除く)
をアカデミアを辞めるラインに設定していた。(というのを5,6年目くらいに思いついた。けど、3年目までに論文書けないならさっさとアカデミアを辞めるつもりではいた。)
今7年目なので、現在のポジションの任期中に、特任助教以上の職に就ければ一応は続ける条件を満たしている。
なぜ辞めようと思ったか?
が、辞めます。
以下長いので、先に要約しておくと、
今のポジションの任期中に次のポストが決まったとすると、たぶん任期5年程度の任期付き助教であろう。
そうすると、さらに次のポストを探さないといけないわけであるが、日本国内で確実にポストが取れる保証はない。
仮に次のポストが見つからなかった場合、年齢は40代に突入しかけるので、民間への転職はかなり厳しくなる。
よって、任期あり教員や高齢ポスドクとなって延命し続け、どうしようもなくなって民間への転職を考えるよりも、若いうちに転職した方が、人生として楽だなっていうことです!
というので、辞めるに至った思考の流れをダラダラ書いていきます。
まず、2021年秋というか冬がポスドク3期目の公募の時期であり、ここで、日本のどこかからポスドクオファーが貰えなければ辞めるつもりでいた。
理由として、最終的に日本のアカデミアポストを取ることを考えると、非常勤講師などの教育歴を付けることが重要であり、そのためには日本にいる方がよい、また、郵送限定公募に対応するためにも日本にいないと金銭的に不利となる、と考えたからである。面接に呼ばれた場合、今後数年は続くと思われるコロナ禍では、海外と日本の往復は金銭的だけでなく手続き的にも厳しい。
(あと、海外で暮らすのはいろいろ大変というのも理由の一つ。日本人にとって暮らしやすいであろう台湾ですら、病気になるといろいろ大変だった。まぁ日本が他の海外に比べて過ごしやすいかと聞かれると、賃貸関連の法律があまりにも時代錯誤であることに加えて連帯保証人制度が変わったため、あまりにも賃貸に関する制度が極めて悪質になり果てたので、必ずしもそうではないけど。)
ポスドク公募を選んで出したため、いわゆるファーストラウンド(1月7日のこと)の終了時点でオファーがなかった。
東北大の残り任期は9月末なので、任期切れで無給研究員にならないように、数日後から転職活動を始めた。
しかし、幸運にも、基礎物理学研究所から湯川研究員のポスドクのオファーを貰えたので、ひとまず物理を続けることにし、転職活動はそこそこな感じにした。
一応、民間に転職するにしても、東北大の残り任期8か月で転職がうまくいくかどうか不安だったので、京都に移った。
(東北に9月末までいて、10月から京都に3年間という交渉も出来たと思うが、仮にアカデミアに残れる期間が半年延びたとしても次のポストが無事に決まる保証はないし、さらに年齢が上がれば上がるほどアカデミアを離れるのが難しくなると思ったので、交渉はしなかった。)
日本のアカデミアポスト
自分の立場から見たアカデミアポストに関してざっとまとめておきます。
日本のアカデミアポストはおおよそ二つに区分できる。旧帝大や研究所などの研究がメインのポストと地方大や私大・高専などの教育がメインのポストである。
旧帝大や研究所のポストの任期なしポストは競争が激しいし、任期ありポスト(例えば京大白眉や名古屋のYLC)であっても得るのは容易ではない。
前者は素粒子論と分野指定される分、業績が重視される。さらに自分がこの分野に入ってから、旧帝大・研究所クラスの准教授・助教ポストはほとんど動いてない。彼らが異動しない限り、退官までそのポストは埋まったままなので、10~20年くらい今の若手にはチャンスすらない。
後者は分野指定しない分、業績だけでなく、公募書類をしっかり書かないといけない。専門家以外の人が審査に入る分、専門家以外に対してウケがいい研究をしてる方が有利な気がする。
自分の実力を考えると、地方大や私大・高専などの教育がメインのポストが妥当だということになる。
そういう大学の公募の多くは、研究分野の指定がされてない。つまり、何が重視されるのかよく分からないので、どこかで職を得ようと思うと、出せる公募はすべて出していく必要がある。
- 採用されている人の傾向を見るに、ある一定の業績を超えた人の中で、教育経験があり、教育及び雑務をこなせる人が採用されやすい傾向にあると思う。
この「ある一定の業績」というのが極めて低い場合もあるので、全然業績のない人が採用されるということもある。
逆に言うと、業績が抜きんでてる人が採用されるわけではない気がする(たとえ、その人が教育や雑務をしっかりとこなせる人であっても)。 - また、公募であってもコネ人事の場合もあるし、そもそも公募ですらない場合もある。
- ここでいう出せる公募というのは、研究分野が数学や宇宙など自分の研究分野と違ったとしても講義内容が線型代数・微積、基礎物理学など教えることが可能であるような公募のこと。
で、すべての公募に出そうと思うと何が大変かというと、
- 独自フォーマットであることが多く、書類を使いまわすことができない。
例えば業績一覧で言うと、TeXで作った業績をエクセルに貼り付け、掲載論文の開始・終了ページを調べ、インパクトファクターを記入などの作業が必要。
これまでの研究内容・これからの研究計画のページ数が1,2ページのものから4,5ページにわたる公募書類など様々。
(教育メインの大学の公募の場合ページ数が短い場合が多いので、新しく書く分には楽である。その代わり、採用側は何を判断してるの?って疑問になる。) - 使い回すことのできない特殊作文。
例えば、シラバスの作成など。 - 郵送限定
- さらに、pdfファイルをCD/DVD または USB に入れて、それを郵送するという公募もある。
というので、一つの公募書類を作成するのに少なくとも数時間かかるし、さらに郵送代もかかるわけである。
ポストを得るためには助教・准教授公募に出していくわけだが、
- 助教であれば、任期あり、にもかかわらず教育duty多め。
- 准教授であれば、任期なしの場合が多いが、教育経験が要求される。
- ポスドクで教育経験を積むには、非常勤講師をする必要がある。しかし、その先を見つけるのは簡単ではない。
という状況である。
補足
旧帝大・研究所クラスの助教・准教授公募は、同じ分野の人がショートリストを作成する分、実力・業績上位者が占めている。(自分がこの分野に入って以降では、例外は一件だけだった。)
が、それ以外だと、業績順に決まるわけではないので、どんなに業績を出していても決まらない人はいつまでも決まらないというのを見てきた。
逆に、ほとんど業績ない人でも決まっている人は決まっているという。
何を頑張れば、採用されるか分からないので、人生設計を立てられない。
任期なしポストを得るのに、競争があることはいいことだと思う。
しかし、ポストを減らしたり、任期ありや競争的獲得資金によるポストにした結果、業績の評価よりも別の要因(コネ、分野が近い、教育経験)で採用が決まっているとしか思えない。まぁ分野が違うと適切に業績を評価できる人なんて存在しないので。
教育経験で評価するのは妥当な気もするが、そもそも教育経験を積むための助教ポストがほぼ存在しない(任期付きポストの一部は教育dutyがないことが多い)。
また、ポストを減らしたり、任期ありや競争的獲得資金によるポストにした結果、同年代でアカデミア業界に残る人が少なくなったわけではなく、残る人は変わらないままで、任期なしになれなかった人の待遇が上の世代の人と比べて著しく悪くなっただけである。
(非常勤講師・無給研究員という受け皿がいつまでも用意されてしまっているため、アカデミア業界を離れることができずズルズルと残ってしまった人がそこそこいる気がする。民間就職するかしないかは本人が決める問題なので、それでもいいという考えもあるけど、自分は理解できない。個人的には、研究業績が平均に満たない人に対しては、給料を受け取れるポストがなくなって民間就職せざるをえないという状況になる方が自然だと思うんですが。ただただ、若手のポストが高齢ポスドクに回るようになるだけなので。)
現状
日本の現在のアカデミアの状況を踏まえて、自身の現状として
- 若手奨励賞も取ったし、年1本以上の論文数はあるので、どこかでポストを取れるだけの業績・実績はある。
- 特任助教の面接には数回呼ばれたことがあるので、あと5年以内であれば、特任助教以上のポストには就けそうな気はする。
- しかし、旧帝大・研究所クラスの任期なしポストに就けるほどの業績はない。そもそも助教クラスの任期なしはポストがない。
- ということは、任期あり助教や地方大・私大の任期なし准教授を目指すことになる。
であろう。では、任期あり助教を目指すとすると、
- 任期あり助教を分類すると、旧帝大・研究所クラスの研究メインのポストと地方大や私大の教育dutyの多いポストがある。
- どちらの場合であっても、研究業績を出していたとしてもその次のポストが決まるとは限らない。
実際、任期ありポストから日本の任期なしにうまく異動できた人もいるものの、研究業績がある人でも日本国内の大学ポストが見つからず、海外へ行く、高専に行く、別の予算で数年間再雇用(ただし10年ルールを超えないように)という人が多いような気もする。それでもいい方で、非常勤講師や無給ポスドクとして残っている人もいる。 - 教育dutyの多い特任助教になった場合、研究時間が取れなくて、研究ができない可能性もある。
で、教育を熱心にやっていたからと言って、次のポストが無事決まるのかというとそんなことはなさそうな気がする。 - さらにdutyのために、数年に一本も論文が出せないほど忙しくなったとしたら、ではなぜアカデミアに残ったのか?、ということが疑問になる。
任期なしポストなら納得できるが、ポスドク先が見つからない・任期切れになって非常勤講師で食いつないでいる場合、研究はできない・給料も少ない、という状況になるのでさらに疑問である。 - 自分の場合ポスドク3期目で任期あり助教になったとして、その5年後というと年齢的には40歳前後である。その時点で次の行先が決まらなくて、民間に転職しようとしても年齢的に厳しいと思われる。
- つまり、任期ありポストというのは自分にとって、アカデミアに残るためのキャリアとして正解ではなく、自身の首を絞め、将来の可能性を著しく狭めるとしか思えない。
これは任期切れが転職も視野に入れやすい35歳というタイミングではなく、40歳という後戻りができない年齢で起きるからこそ、こういう判断です。
という不安がある。では任期なし准教授はどうか?
- 教育経験が一切ないため、採用される気がしない。そもそも任期なし准教授で出しやすい公募や待遇のいいポストであれば、自分より業績・教育経験がある人が出す。
という考えになり、やはりポストがなくて、自分に回ってくるのは運やコネがないと厳しいと感じた。
アカデミア業界の悪しき特徴として、
- 任期ありと任期なしのポストの待遇の差。
給料が低い、というのは納得できる。企業と違い、金を稼げるわけではないので、年収600万円あればいいほうだと思うし、実際任期なし以上であればその程度ある。それに家賃補助などもある。
しかし、任期ありの場合、どの財源かによって待遇が変わり、給料が低いばかりでなく、家賃補助や雇用保険など様々なところが任期なし教員と比べて低い。
正直、アラフォーになってその待遇はきつい。
任期ありの場合、数年で引っ越しすることになり、その引っ越しの度に数十万の費用が掛かる。 - テニュアトラックや任期の更新。
テニュアトラックや業績によって任期が延びると書かれていても、実際はテニュアトラックではなかったり、雇用時には既に任期の延長ができないことが判明してる公募もある。
名古屋のYLCや東北大学の学際科学のテニュアトラック制度はなかなか酷い。 - 内定や雇用条件通知書を出さないため、突然反故にされることがある。
- 公募書類郵送代負担や面接旅費の負担。
- 任期付き公募なのに、超人を求めすぎ。
京大の公募で、新分野の創造とかあったけど、それができる人であれば、すでに他の任期なしのポストに就いてますよ? - 任期に見合わない職務内容
教育経験も豊富で、研究もしっかりやっており、大学の運営に貢献してくれる方、ただし任期は3年で更新や無期雇用への移行はなし、など。
このような公募は若手の使い捨てとしか思えない。 - 公募ではない人事が稀にあり、自分より業績が少ない人が採用されてるのは納得いかない。
論文数・引用件数がすべてではないのは分かるが、その人がアイディアを出したであろう論文が全くなさそうな人が採用されるのはどういうことなのだろう?
(素粒子論分野では、著者をアルファベット順に並べるため、業績リストから誰がメインの仕事が判断しにくいことは要注意。) - 酷いコネ人事を何度か見た。さすがに過去5年くらい論文書いてない人を旧帝大の准教授として採用するのはあり得ない。採用したら論文を書かなくなったではなく、書かない人を採用した結果、やはり書かなかったなのだから。
- 教授公募で募集時点で一人に絞るために「数値解析を用いた超弦理論の研究」という極めて狭い分野での公募を行うなど。ショートリストを聞いて、人事の酷さを垣間見た。
- 今後女性限定公募が増えそうであり、女性でないことがアカデミア業界で極めて不利になると感じた。
その女性限定公募ですら任期ありの場合もある。 - 実質給料マイナスとなっても、教育経験のために非常勤講師をやるほど、競争が激化している。
などがあることに加えて、周りの人を見ていて、
- 自分より業績・教育経験がある人が、出せる公募全部に出して、なかなか決まらなかったから。
- 旧帝大・研究所クラスの教員で、全然論文を書かない人が多数いる。その人らが抜けていかない限り、若手にポストが回ってくることはない。
- このように本人の実力不足ややる気不足で論文が書けない場合もある。しかし、教育メインの大学にいる場合、時間が取れなくて研究できない場合もある。
とも感じた。
まとめ
以上を踏まえて、
- うまくいったとして、次のポストは任期5年程度の任期付き助教である。そして、任期切れにならないために任期なしのポストを目指さないといけないわけであるが、日本国内で確実にポストが取れる保証はない。
仮に任期なしのポストが見つからなかったとすると、アカデミアに残る場合の選択肢として、- 海外に行く
- 任期ありのポストのままでいる(10年ルールがあるので、同じところにいれるとは限らない)
- ポスドクに舞い戻る
- URAというポジションにつく
- 非常勤講師や協力研究員という薄給・無給ポジションで頑張る
- 海外に行く:
研究をきちんとこなしていれば、一番確実にポストを取れる選択肢だと思う。少なくとも、中国で職を取れるかどうかは、向こう3年間は大きな変化はないと思う。しかし、10年間という長い期間で見たときにはどうなってるか分からない。
しかし、自分としては中国に行きたいと思えない。 - 任期ありのポストのままでいる:
研究が一番できるポストだと思う。ただ、45歳を過ぎると、暗黙の年齢制限により旧帝大・研究所クラスじゃないとポストを取るのが難しいように見える。
さらに10年ルールで同じところにとどまり続けることはできないので、いずれ、以下の3. - 5.になる可能性がある。
任期3~5年の場合、そのたびに引っ越しというのはあまりにも大変すぎる。日本で新たに賃貸を探して、契約するというのは極めて大変。 - ポスドク:
任期ありのポストに比べると、給料も低いし、任期も短いので、大変ですよね。 - URA:
事務員と研究者の事務仕事の中間のようなお仕事。最近、ポスドクから移った人何人かいる。給料と任期がほぼポスドクなので、行先がどこにもなくなったら分かるけど、さすがに。。。 - 薄給・無給ポジション:
!?!?
- 次の行先が見つからなくなるまで、任期付き・ポスドクでいることは可能だと思うが、それをすると民間就職すらできなくて詰む。
(若手向けの任期なしポストを削りに削って、それを競争的獲得資金にした結果、任期有りのポストを見つけるのは難しくなくなってきたので、現状のままであれば、あと9年くらいは日本国内でポスドクができるような気もする。) - 仮にアカデミアに残り続けた場合、この先ずっと論文を書き続けられるか自信がない。かといって、自分のこれまでの研究のε変形のような研究をするつもりはない。
つまり、ポスドクであるからこそ論文が書けるのであって、論文を読む時間すら取れなくなってしまった場合、論文を出せる気がしない。
実際、自分に近い分野の若手(助教以上)で、旧帝大・研究所クラス以外で論文を書き続けてる人が極めて少ない。(シニアならなおさら書けてない。)
(優秀だから採用された)旧帝大・研究所クラスの教員ですら、論文をろくに書けてない人はいる。
やはり、自分は修士・博士課程の学生の面倒を見れるレベルには到達しそうにないと感じた。 - 幸運にも任期なしのポストにありつけたとしよう。そうすると研究時間を取れることはほぼなく、大学運営業務・講義で多くの時間を費やすことになると思う。
そうすると、自分としては、講義する内容についてただただ詳しい人になる気がする。例えば、学生の躓きやすい物理の話題とか。
それなら、民間就職して機械学習とかに詳しくなる方が、自分としては有意義な気がした。 - 郵送限定公募は出す気になれない。
大臣が改善するようにお触れを出したにも関わらず、郵送限定に固執してる大学で働きたいと思えない。業務を行うべき教員・事務員が不足してて、それにも関わらず雇用できてないわけだし。 - やはり業績がある人は、任期ありと言えど、そこそこいいポジションには就いている。
そういう人でさえ次の行先が決まらない状況なのに、任期ありの助教ポジションやポスドクポジションすら見つからない人が非常勤などで食いつないでいるのを見ると、自分の将来のことをただ何も考えていないだけのような気がする。
そういう人が多数いる状況で自分も同じ状況になる可能性を考えると、割に合わないなと。 - そもそもなぜアカデミアに残り続けるのか?
研究で生計を立てられるのは大学教員だけであろう。では仮に、任期ありの助手やプロ非常勤講師(非常勤講師だけで生計を立ててる人)になったと想像してみよう。
これらのポジションは忙しいので、研究をする時間はなかなか取れない。任期がいずれ切れるので、その後のポジションについて悩まないといけないので、落ち着いて研究できるかも怪しい。(ポスドク1期目・2期目の場合は研究さえしていれば、簡単に次のポジションが決まるので、そこまで悩まなくてもいい気がする。実際は不安だったけど。)
仮に任期なしであっても、旧帝大クラスの教員ですら、忙しくて研究する時間がないと嘆いている。では、なぜアカデミア業界に残るのか?
アカデミア業界に残り続けるメリットを考えると- 科研費に応募できる。
- 大学に所属していれば、大学の設備を存分に利用できる。例えば、大学の図書館の本の蔵書数や充実度は貴重である。
- セミナーや研究会に参加しやすい。
- ある程度の規模の研究室だと、議論する人を見つけやすい。
- コミュニティの一員である。
研究がしたいにも関わらず、時間が取れなくて、研究ができないポジションに行くくらいなら、民間のホワイト企業に行って、空き時間を研究に充てればいいんじゃないか?という結論に達した。少なくとも素粒子論の研究をするなら、お金はかからないので。
という考えに行きつき、どんなにうまくアカデミア業界でキャリアを積めたとしても、自身としてあまり成長できる気がしないという気がした。それならば、民間に就職した方が、給料も高くなるので、よし転職しよう!という結論に至りました!
その他の理由として、今後のアカデミア業界(特に自分の分野)の見通しを考えた場合
- 任期なしポストは減ることはあっても増えることはない。
今、旧帝大・研究所の任期なしポストのほとんどを45歳以上の人が占めており、その人らが異動・退官しない限り、今若手の人のポストはない。そういういいポストを占めてる人は、分野指定されてない公募には出してなさそうなので、退官まで動かないであろう。 - 任期ありポスト(ポスドク含む)は増えていくだろう。
運営費交付金を削りに削り、それを競争的獲得資金にしたおかげで、若手向けのポストであった任期なし助教はなくなり、任期あり助教やポスドクが増えてきている。
5年前と比べても、科研費ポスドクの公募が多く出ている。 - 女性限定公募が増えるだろう。
今年から素粒子論分野を含む女性限定公募が各大学から出されるようになった。一部の大学しか出さないのなら許容できるが、ほぼすべての大学が女性限定公募を出すと、男性にとっては極めて不利となる。 - ポスドク問題は解決しない。解決するためには、
(1)ポストを増やす、
(2)ポスドクを減らす、
の二つが重要だと思う。しかし、ポストを増やすのは難しいようで、どうがんばっても待遇のいい任期ありポストが限界のようである。
そうすると、ポスドクが減ることで改善するしかない。最近は、優秀な東大の学生がポスドクにならない選択肢を取るようになったため、少しポスドクの数は減ったような気がする。しかし、素粒子論分野でポスドクをやる人は、業績が出せるかどうかに関わらず、アカデミア業界に残り続ける人が一定数いる。このようなポスドクが物理を離れることはほとんどないので、今後もどんどん上の世代が抜けずに残っていくだろう。 - どんなに業績が少なくてもアカデミア業界に残ってる限り、ポストが見つかる可能性はゼロではないので、自分より上の世代が多数残り続けている状況では、やはり自分の将来の不確実性は高まる気がした。
ということも考えられる。
最後に
物理辞めま~す、いぇ~~~い!!!
他にも書きたいことあったけど、長くなるのでこのへんで。
転職活動については別の記事を書く予定ないたので、ぜひそっちも読んで下さい!
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