はじめに

Strings and Fields 2021のあった週(8/23 - 8/27)の出来事を書いておきます。海外でポスドクをする人は自身の身に起きうることかもしれないので、注意喚起として読んで欲しいです。

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背景 

台湾のNCTSという研究所で2019年10月からポスドクをしていました。
オファーをくれたのは、国立精華大学の教授兼NCTSの所長です。
ご存じの通り、2020年1月から中国から広がったコロナウイルスの影響が凄まじく、多くの人はオンラインで議論やセミナーをしたことがあると思います。
NCTSという研究所は私の着任時は新竹の国立精華大学(NTHU)にありましたが、2021年1月から台北の国立台湾大学(NTU)に移転となり、数年をかけて完全移転となります。
そのため、自分のポスドク期間にコロナで人と会いにくい環境と研究所の移転によるゴタゴタの二つが重なりました。ただし、台湾は早期にコロナの抑え込みに成功したので、他国に比べてかなり影響は少なかったと思います。また、研究所の移転によるゴタゴタは事務の人やファカルティには影響ありましたが、ポスドクには特にありませんでした。
NCTSにいたポスドクはNTHUにとどまるかNTUに移るかの選択肢が与えられ、私は関連研究者の多いNTUに2021年4月から異動しました。任期1+1+1年だったので、残りの1.5年をNTUで過ごすつもりでの異動でした。
 

突然のメール

8/23(月)にポスター発表があり、自分の発表を無事終えた。残りの期間は他の人のトークを聞いたり、論文を読みながら過ごすつもりであった。
 
その翌日の24(火)にNTU側のボスから「Plan After September?」という件名のメールが来た。そこには、
今の契約、今年の9月末に終わるけど、その後の予定はどうなってるの?
次の移動のためにビザ延長必要?

というようなことが書かれていた。自分は来年の9月まで研究所のポスドクのつもりでいたし、オファーを貰ったときは、1+1+1年契約で論文書いている限り大丈夫というようなことが書かれていた。実際にそのことはオファーを受ける前にメールで数度確認した。1年目に単著論文1本、2年目に共著論文1本、単著論文2本書いていたので、完全に安心しきっていた(NTHU所属で3本、NTU所属で1本)。研究所にも出張がない限りだいたい行っていたし、セミナーや研究所で開催された研究会にはちゃんと出席していたので、勤務態度が明確に悪かったということはないと思う。


オファーメールに1+1+1年とあり、メールで確認していたので、最初に言ったことと違うじゃないかと指摘し、NTHU側の人に詳細を確認してもらったところ、(1) NTHUの方の書類には1+1の2年契約になっていること、(2) またオファーメールや私の問い合わせには、

The appointment is for 1+1 years, with the second years automatic (unless exceptional poor performance which you don't need to worry about). Further renewal for a third year can be applied but decision will depend on funding and other factors.

people with 1+1 appointment always get 2 years.
 
For the third year renewal, I think it is mostly approved (maybe > 90%?). I only remember one case we didn't approve the application sicne at the time the renewal application was submitted, the person has not written any paper at NCTS (that is about 1.5 year since arrival at NCTS.

We have to write something like "subject to funding" since funding cut from Government sometime can be unpredictable. I hope you can understand this.

となっており、記憶通りだった。つまり3年目の更新は確実ではないが、論文を書いていれば、突然の予算カットや予期せぬ出来事がない限り大丈夫ですよ、と。

自分が着任したときに3年目のポスドクは数人おり、2年目だった人もその後更新され、無事3年目に突入していたので、一応メールで言っていたことは正しいように見えた。


更新に関する連絡はないままに

NTU側の人が取り計らってくれて、どのようなことが起きていたのか教えて貰った。
それによると、
ポスドク6年目に突入しようとしているにも関わらず、他のメンバーとあまり研究交流しなかった・自分より若手のポスドクと共同研究しなかった
ということを更新をしなかった理由として挙げたらしい。例えば1年目の終わりに伝えてくれれば、改善のしようがあるが2年目の終わりに突如としてこう言われても困る。共同研究に関しては、自分以外のhep-thポスドク同士で論文を書いている人たちはいなかった。あまりメンバーと交流しなかったと言われるが、そもそも交流の機会となるグループミーティングや文献紹介は存在しなかった(これはボスの意向だと他の日本人ポスドクから聞いた。hep-phグループは少し大きいので、文献紹介は毎週か隔週でやっていた)。そのため、hep-thグループにどのような学生がいるか数人を除いて知る機会はなかった。また、hep-thポスドクで雇われている人は研究テーマが近い人だけが雇われているわけではないので、共同研究を始めるには不向きであった気がする。
一応、NCTSメンバーの交流のために、30分間で自分の研究内容を非専門家を含むメンバーに向けて話すというDirector's seminarなるものが隔週であった。(ただし、理由は知らないが、このセミナー発表はポスドクだけが行い、ファカルティの人は一切発表していなかった。)着任して数か月後にその機会があり、あまりうまくいっていない研究について議論できたらいいなと思い、準備してセミナーに挑んだが、元ボスは来なかった。このときの参加者は自分を除いて5人しかいなかったと思う。(多いときでも10人程度しかいなかったと思う。)
それにコロナ禍やNCTSの移転前には、元ボスは在宅勤務や忙しい等という理由でほとんど居室に来ていなかったし、何か研究の話を振ってくることは一切なかった。
周りのポスドクを見ても、ポスドク何年目か・他の人と雑談をしているかが違うだけで、大まかな態度に関しては大差ないように見えた。コロナで中国に帰省し、その後一度も来れない人や研究所に一切来ない人でさえも3年目の更新を受けており、だいたい論文を書いていれば、3年目は保障されているように見えた。

本当の理由は?

2年目で論文数4本(1年半で論文数3本)あるので、普通であれば更新されるには十分な量はあったと思う。論文のクオリティに関しても最近arXivに投稿した論文を除いてPRDとJHEPにアクセプトされてるので、最低限は満たしていると思う。実際、自分より1年早くポスドクとして着任し、3年目の更新があった人の論文数は2本であり、更新の判断がされるときは1本であったであろう。
 
他の日本人ポスドクから聞いた話では、財源の都合上更新できる人数に制限があり、その人も更新されない可能性があったと言っていた。しかし、自分と同時期に着任したポスドク数人も2年目の途中で異動したり、自分より1年後に着任したポスドク数人が1年も経過せずに辞めたため、財源に関しても問題ないと思われる。
 
このような状況でなぜ更新されなかったか。指摘した理由であれば、もっと多くの人がこれまで更新されなかったはずである。予想される理由は、
  1. ボスと一度議論したことがあるテーマ(アイディアはもちろん自分)があり、それを単著論文として出した。
  2. 特に、上の単著論文でボスの論文を引用しなかった。廊下ですれ違ったときに「なぜあの論文で私の論文を引用しなかったのか?」と問い詰められたが、arXivに投稿して数か月、さらに雑誌にアクセプトされていたので、次回から引用しますと答えた。
  3. あまりボスと話さなかった。 
  4. NTUに異動した。
  5. 同室のポスドクに対して、「うるさいから独り言を辞めてくれないか?」と言ったことがあった。
の5点である。
1に関しては共同研究としていれば、確かに切られることはなかったかもしれない。しかし、議論したときにこちらの質問をあまり理解してくれなかったのと、自分ひとりで書けてしまったので、単著として出す方がよいと思った。自分より若手と書くならリーダーシップを取っているように見えるが、シニアの人と書いても自分の寄与を過小評価される可能性を考えた。
2に関しては、arXivに投稿したときやセミナー発表をしたときに指摘すべきだと思うし、そもそもその文脈で引用されることのない論文なので、無理に引用する必要はないと思う。他の研究者が論文を見たときに、同じグループ内の人の論文が引用されていないのを見つけたら不仲なのかと察してしまうからと言われましたが、その通りになりました。
3はそもそも忙しくて研究所にすらいない人といつ話せばいいのか、あとボス自体が文献紹介をやりたくないからという理由でgroup meetingや文献紹介の機会を作らなかったらしいので、こちらだけの問題とは言えないと思う。少なくとも、こちらから無理に話かけようとはしなかった。が、こちらから向こうを避けたり、無視するなど邪険にするということはしていない。
4に関しては、ポスドクがNTUを選択しても不利にならないように配慮すると聞いていたが、この選択で1.5年しかNTHUの方にいないことになったので、研究交流が足りないみたいな判断に繋がったのかも。また、異動の際に、事務の方で手続きに齟齬があったのかもしれない。
5はしゃーない。同室の人が毎日うるさかったんだ。ただ、その後、その人と不仲になったわけではない。

 

どうすればよかったか?

そもそも更新するつもりがないのなら、さっさとそれを私に伝えるべきだったと思う。セミナーでの出張以外、ちゃんと大学にも行っていたし、セミナーにも出席していた。これに関しては確実に向こうの不手際だと思う。伝えようとしていたが、居室に来ていなかったので、伝えることができなかったという言い訳は立たない。
 
それはさておき、どうすべきだったか? 
  • 一つ目はオファーメールのことを覚えていて、3年目の更新について確認することだった。ただし、これはオファーのやりとりから2年くらい経過しているし、いつ更新の判断がなされるか知らないため、いつ聞けばいいか分からなかった。またオファーメールを受け取った場合それ以降のやり取りをccとして信頼できる人に送っているといいかもしれない。
  • 台湾のポスドクは基本的に更新はないものとしてみなす方がよいのかもしれない。推薦者と受け入れ先のボスの関係が親密であり、不当な扱いを受けないと思えるなら問題ないと思うが、そうでないなら任期を少なく見積もる方が突然の更新打ち切りに会わなくて済む。その理由の一つとして、台湾の契約書には1年間の契約期間しか書かれておらず、契約更新に関する記載が一切ないため、本当の年数は更新されるまで分からない。
  • (台湾に限らず、2+1のような更新のあるポスドクポジションは多い。この+1をないかもと思ってポスドク公募に黙って出すと、ボスによっては怒る可能性もあるので事前に連絡はした方がよい。)
  • (知り合いの)日本人が雇われており、問題がなかったからと言って、自分も問題が起きないと思わない方がいい。日本であれば日本語でやりとりできるため、問題が起きても解決しやすい。 また、知り合いが助けてくれる可能性も高い。
    が、海外であればなかなかそううまくはいかない。
    他の人で問題が起きなかったのは、本当にたまたまの可能性もある。
  • すでに日本人ポスドクがいたので、オファーを受け取る前に研究室の雰囲気を聞いておくべきだった。特にオファーメールと実際の待遇に差があるかの確認は重要だった。

あたりでしょうか?

結果論で言うと、オファーメールを疑って任期2年のポジションだとみなすのが正解でした。実際、自分の受け取ったオファーメールと実際の待遇に大きな差があったので、NTHUは大きく盛ったメールを送ってきていました。


その後

メールを受け取った日に締め切りの東北大学のポスドク公募があったので、とりあえずそれに応募した。さらにNTU側の人(新しいボス)がrenewal processの手続きを手配してくれたが、東北大学の任期1年のポスドクとして採用通知が来たので、そちらに行くことにした。一応、NCTS側の更新が上手くいっていた場合と同じ任期である。
 
任期ありポスドクの人はいつでも切られる可能性があるので、自身の契約をよく確認しておいてほしいです。財源がないという理由で延長がされないという例(もちろん直前の通知ではない)はいくつか聞いたことがあります。(2+1年のオファーで、+1年の延長は財源によると記載されており、着任後、財源がないので延長は出来ません、と言われる場合。)しかし、ボスと馬が合わない・要求されている(が、通知されていない)条件に達していない、などの理由で突如として切られる可能性もあります。
 
今後、海外の大学・研究所に任期付きでいく人は注意してください!!
n+1年のような契約の場合、n-1年目の終わり頃(9月頃)にきちんと更新されるかどうかよく確認しておきましょう!!
 

最後に

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飛行機代・2週間隔離のホテル代が自費になりそうなので、この突然の異動で30万円以上の出費です。。。