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はじめに

大学教員になるには、「学振は要らない。実際に自分は取ってないから。」という主張をネットで見かけた気がする....というのが、本当なのかどうか気になるところ。

 

そこで、素粒子論分野でポスドクになった人に限って、どれくらいの人が学振を取ってたか、その後、大学教員になれたかどうかを調べてみました。


学振とは

学振とは、日本学術振興会による博士課程の学生への支援です。詳細はググって下さい。
 
修士2年で申請するDC1と博士1, 2年で申請するDC2の2種類があります。採択率はそれぞれ、20%ぐらいです。DC1とDC2を合わせると、ある学年の36%くらいの人が学振に採択されていることになります。(DC2の採用者は2学年に分かれますが、ここでは大雑把にDC2の採択者を1年に1学年しか採用されてないと仮定し、計算しました。)


調べ方

ポスドクとなった人をただただ数え上げた。そして、その人が学振を取ってるかどうか調べた。一度でもポスドクになった人について調べているので、すでに物理を辞めた人や分野転向をした人も含まれています。

一番左の列が学位取得年です。

 

結果

この表から、ポスドクになった人のうち66%の人が学振に採用されていたことが分かります。しかし、日本における素粒子論の教員の壁は高く、学位取得後11年以内に限ると(2021年4月からポスドクになる人も博士号取得見込みであれば、公募に出せるので、加えています)、23%の人しか職を取れていません。(海外で職を得た人や高専で職を得た人を加えるともう少し高くなり、32%ほどになります。)
 
流石に、一期目のポスドクを終えていない人が職を取るのは難しいから、除外した結果が見たいと言う人のために言っておくと、学位取得後4年目から11年目の人に限っても、(海外・高専除いて)約30%くらいの人しか日本で職を取れていません。うーん、厳しい。
 
今後、これらの世代の人が教員になることを考えると、安易に「学振取れなくても大丈夫」などとアドバイスはできなくなりそう。 


補足

この結果には、生存者バイアスがあります。ポスドクになるかどうか判断する材料として、学振DCの取得を条件にしている人もいるので、その結果、ポスドクの学振DC採択率は高くなっています。
 
昔はもっと採択率が低かったので、40代以上の教員が学振にお世話になっていなくても不思議ではありません。けど、若い世代は.....多くの人が学振を貰ってました。
 
2010年 - 2021年のデータで、学振DCを取得した人のうち、約29%が日本で職を取れています。一方、学振DCを取得していない人では、約12%の人しか取れていません。職を取った人の内訳を見ると、約82%の人が学振持ちでした。海外で職を取った人を加えると、もう少し高くなります。

 

じゃあ逆に今は学振ないと教員になれないのか? 

的な記事を見かけたので、追記でコメント。
 
たぶん、学振の有無の教員になれるかどうかは弱い相関が少なくともあり、学振がある方が教員にはなりやすいように見えます。しかし、学振は運要素も大きいので、学振を取れなかったから、アカデミア業界に向いていないというのは短絡的だと思います。
 
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