2021年11月・12月の気になった論文
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11月・12月にarXivに投稿された論文で気になったものをまとめた。
2111.01005
Solving information loss paradox via Euclidean path integral
by Pisin Chen, Misao Sasaki, Dong-han Yeom, Junggi Yoon
概略:
PRL投稿用っぽい論文。ブラックホールの情報喪失問題を別の手法で解いたと主張する論文。重力のEuclideanの経路積分に二つの寄与があり、一つは情報喪失に寄与している方で、もう一つは普通に考えた場合出ない方。エントロピーはこの二つの和で表されるらしいので、ブラックホールの蒸発によってそれらの係数が時間変化していくらしい。それによってPage曲線が再現されているみたい。最近の流行りのレプリカワームホールとは違うらしい。個人的には、あまり納得いかなかった。
2111.02429
Complexity Equals Anything?
by Alexandre Belin, Robert C. Myers, Shan-Ming Ruan, Gábor Sárosi, Antony J. Speranza
概略:
Holographic complexityに任意性があるのは不満点として知られていたが、これは不満点ではなく、むしろ場の理論のComplexityの定義に依存する不定性であるから、不定性があるのは自然と指摘している。さらに、holographic complexityとして新たな幾何学量を導入し、これまで知られていた二つの条件、(1)thermo field doubleの場合late timeで時間に比例する、(2)ブラックホールにshock waveを加えた場合の振る舞い、が再現できることを明らかにしている。
2111.05355
Holevo Information and Ensemble Theory of Gravity
by Xiao-Liang Qi, Zhou Shangnan, Zhenbin Yang
概略:
Holevo情報量に関するIsland公式を議論した論文。
2111.06514
A Note On Complex Spacetime Metrics
by Edward Witten
概略:
Wittenの複素計量を持つ場合の場の量子論や重力理論に関するノート。かなりのspeculationが書かれている。面白そうだったので、チラ見してみた。
2111.14713
Weyl Anomalies of Four Dimensional Conformal Boundaries and Defects
by Adam Chalabi, Christopher P. Herzog, Andy O'Bannon, Brandon Robinson, Jacopo Sisti
概略:
4次元defectを持つDCFTの許されるdefect anomalyの項を完全に分類した論文。そのanomalyの係数がどういう物理量に関係してるかなど、いろいろ調べている。
2112.00750
Bootstrapping Boundaries and Branes
by Scott Collier, Dalimil Mazac, Yifan Wang
概略:
BCFTにbootstrapを適用することで、g functionにupper boundとlower bound両方の制限を導出した論文。凄い。
2112.01084
Scale and Conformal Invariance in Higher Derivative Shift Symmetric Theories
by Mahmoud Safari, Andreas Stergiou, Gian Paolo Vacca, Omar Zanusso
概略:
スカラー場の微分だけで表されるラグランジアンについての共形普遍性を考察している論文。高階微分を許しているので、一般にnon-unitaryな理論を扱っているみたいなのだが、その動機をあんまり語ってない。そこら辺をもう少し語って欲しかった。
2112.03922
Islands and the de Sitter entropy bound
by Daniele Teresi
概略:
dS時空におけるIsland公式に関する論文。他にも似たような論文がいろいろあるけど、それらとの違いがあまり強調されていなくて、どのあたりが新しいのかあまりよく分からなかった。
2112.04860
Holographic Complexity of Quantum Black Holes
by Roberto Emparan, Antonia Micol Frassino, Martin Sasieta, Marija Tomašević
概略:
引用されてた。CV公式とCA公式に量子補正を加えた論文。量子補正を加えると、どうやらCV公式とCA公式で違う振る舞いをするらしい。
2112.08226
A New Framework for Higher Loop Witten Diagrams
by Aidan Herderschee
概略:
PRL投稿用っぽいので、ざっと眺めてみた。相関関数を計算するために、Witten diagramを計算しているみたいで、そのときの表示にいろいろあるので、differential表示を用いている。loopがある場合に適用すると、この表示は便利らしいことが書いてあった気がする。
2112.09132
Entanglement Phase Structure of a Holographic BCFT in a Black Hole Background
by Hao Geng, Andreas Karch, Carlos Perez-Pardavila, Suvrat Raju, Lisa Randall, Marcos Riojas, Sanjit Shashi
概略:
アブストラクトしか読んでない。double holographicなセットアップでダイナミカルでない重力の領域のEEは、Karch-Randoll braneの角度によってはislandがないことがこの論文の著者たちによって指摘されていた。この論文では、有限温度(のブラックホール?)にすると、そのような臨界的な角度がないことを見つけたらしい。
2112.10634
Localized magnetic field in the O(N) model
by Gabriel Cuomo, Zohar Komargodski, Márk Mezei
概略:
引用されてた。スカラー場の方しか引用されてなかったけど、スカラー場しか議論してなかったから仕方ないかなと思った。自由スカラー場に対して、空間の一点で基本場一つのみで引き起こされた繰り込み群(defect RG flow)を議論した論文。
2112.11163
A bound on energy dependence of chaos
by Koji Hashimoto, Keiju Murata, Norihiro Tanahashi, Ryota Watanabe
概略:
エネルギースケールを決めたときに、Lyapunov指数のエネルギー依存性に対して、conjectureを与えた論文。
2112.14210
Charges, conserved quantities and fluxes in de Sitter spacetime
by Aaron Poole, Kostas Skenderis, Marika Taylor
概略:
PRL投稿用の論文で、asymptotic dS時空上の保存量に関して議論している。Covariant phase space formalismと関連があると知って、満足した。
2112.14593
Chaos by Magic
by Kanato Goto, Tomoki Nosaka, Masahiro Nozaki
概略:
Computational complexityに似た量である「Mana」と「Robustness of Magic」という古典的な操作の複雑性について簡単なスピン模型で調べた論文。AdS/CFTへの応用はコメント程度でこれからの発展に期待という感じだった。
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